前回の記事で、HPは「法人の人格の定義ファイル」になったと書きました。AIが会社を要約して答える時代、その要約の骨格を自分で書けるのは、自社サイトだけだからです。
今回は、その定義ファイルに「何を、どう書けば」AIと人の両方に通じるのか──実務の話をします。
結論から言います。AI時代のHPの正体は、次の一行です。
証拠付きで宣言された、経営理念とUSP。
「宣言」と「証拠」。この二語の意味を、順に説明します。
CONTENTS
1.宣言 ── あなたの会社を、一文で言えるか
宣言とは、「うちは何者で、誰に、何を約束する会社か」を言い切ることです。
試しに、あなたの会社のトップページを開いてください。そこに書いてあるのは、宣言でしょうか。それとも「豊かな暮らしに貢献します」「お客様に寄り添います」のような、どの会社に貼っても成立する文章でしょうか。
AIは要約の機械です。特徴のない文章からは、特徴のない要約しか生まれません。「〇〇市の建設会社です」──あなたの会社がAIにそう紹介されるのは、サイトがそれ以上のことを言い切っていないからです。
宣言の条件は三つです。固有であること(競合の社名に入れ替えたら成立しない)。対象が明確なこと(誰のための会社かが書いてある)。約束があること(何がどうなるかを言い切っている)。
この三つを満たした一文を持つことが、すべての出発点です。ただし──ここからが本題ですが──宣言だけでは、まだ半分です。
2.証拠 ── AIは、裏を取る
AIは自己申告を信じません。正確に言えば、外部の情報と突き合わせて、確からしさを判定します。「地域No.1」と書いてあっても、それを裏付ける外部の痕跡がなければ、要約には採用されない。逆に、宣言と証拠が噛み合っているサイトの記述は、そのまま要約の骨格になります。
では、機械と人の両方に効く「証拠」とは何か。強い順に挙げます。
1. 第三者媒体の記録。 新聞、業界紙、プレスリリース配信、行政の公表資料。自分のサイトの外にあり、自分では書き換えられない情報ほど強い。公共工事の落札記録が建設業界紙に載る──これは本人の作文ではない事実です。私自身、20年以上前のプレスリリースを今もプロフィールから参照しています。「日本初のサービスを立ち上げた」という宣言の裏が、第三者の配信記録で取れるからです。
2. 実名と実数。 「多数の実績」ではなく「1,500社」。「大型案件」ではなく「3億4千万円の助成金」。「お客様に好評」ではなく、実名の会社の、検証可能な数字。丸めた表現は、人には謙虚に見えても、機械には「裏の取れない主張」としか映りません。
3. 実在する人間。 有資格者の実名と資格番号。代表者の顔と来歴。誰が言っているのか分からないサイトの主張は、誰の主張でもありません。
4. 構造化された事実。 会社名、所在地、創業年、事業内容を、機械が読める形式(構造化データ)でサイトに埋め込むこと。人には見えない部分ですが、AIが「この会社の公式情報はこれだ」と特定する錨になります。
5. 矛盾のなさ。 これが最も見落とされます。サイトでは「1,000社の実績」、SNSでは「1,500社」、ポータルの登録は5年前のまま──数字や記述が場所によって食い違う会社を、AIは信用しません。すべての媒体で、事実の表記を一字一句揃える。地味ですが、効きます。
3.「書くこと」ではなく「編集し続けること」
お気づきでしょうか。この五つのうち、デザインの話は一つもありません。
GEO対策、AI検索対策と聞くと、新しい技術的な魔法を想像される方が多いのですが、実体は違います。自社にまつわる事実を集め、裏付けを揃え、矛盾を消し、機械に読める形で置く──「編集」の仕事です。
そしてこの編集には、終わりがありません。実績は増え、事例は積み上がり、外部の言及は変化し続けます。HPを「一度作って5年放置するもの」と考えている限り、定義ファイルは古い自分を語り続けます。
厳しいことを言えば、証拠の乏しい会社は、この作業の前に立ち止まることになります。載せられる実名がない。言い切れる数字がない。それは編集の問題ではなく、事業の問題です。その場合にやるべきことは、書き方の工夫ではなく、現実の代償を払って証拠を作りに行くこと──これについては、別の記事で書きました(USPには「原価」がある、という話です)。
4.明日からできる、最初の三歩
長くなりました。実務の入口だけ、置いておきます。
一歩目。 AIに自社のことを聞き、返ってきた要約を保存する。それが現在の「他人が書いたあなたの定義」です。
二歩目。 自社の宣言を一文書く。固有で、対象が明確で、約束がある一文。書けなければ、それが最初の経営課題です。
三歩目。 その宣言を裏付ける証拠を、五つの型に沿って棚卸しする。第三者記録、実名と実数、人間、構造化、矛盾の有無。
この三歩の先にあるのが、AIに「この会社はここが違う」と言わせるサイト──証拠付きで宣言された、あなたの会社の定義ファイルです。
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