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ヴァリューズの調査によると、日本のGoogle検索で、検索結果から外部サイトをクリックせずに終わった割合(ゼロクリック率)は、2025年9月の63.5%から、2026年7月には68.1%に上がっています。
Webサイトを作り、運用する立場からすると、他人事ではない数字です。でも、数字だけを見て慌てる前に、何が起きているのかを分けて見る必要があります。
POINT
- 減っているのは「PV」と「記事の横に貼られた広告」。検索広告そのものは伸びている
- これからの企業サイトは、「人に名前を覚えてもらう」ことと「AIに正しく理解してもらう」ことを、別々に設計する必要がある
- 一次情報は、1回の取材から複数の形に展開して使い回す
1.何が減って、何が伸びているのか
まず事実から確認します。
ゼロクリック化は、AIが始めたものではありません。米国の調査では、10年前の時点ですでに約45%の検索がクリックなしで終わっていました。天気や計算、営業時間のように、検索結果だけで答えが分かる検索は昔からあったからです。
変わったのは、「〜とは」「〜のやり方」のように、これまではページを読まないと分からなかった質問まで、AIが検索結果の上で答えるようになったことです。日本語の検索でAI Overview(AIによる概要)が表示される割合は75.3%で、「〜とは」型の検索に限ると93.1%にのぼるという調査もあります。
では、Googleの広告は困っているのか。答えはノーです。
| 項目 | 2026年1〜3月期(前年比) |
|---|---|
| Google検索関連の売上 | +19% |
| 外部サイト向け広告(AdSenseなど=Google Network)の売上 | −4% |
検索の回数自体は増えていて、検索広告は伸びています。縮んでいるのは、AdSenseのように他人のサイトに貼られる広告のほうです。外部サイト向け広告がGoogleの広告売上に占める割合は、2年で約12%から約9%まで下がりました。
ここは言い方に注意が必要です。外部サイト向け広告が縮んでいる原因を、AIだけに結びつけることはできません。広告主の予算配分の変化など、要因は複数あります。ただ、AIの回答で完結する検索が増えるほど、Googleは自社の画面で広告を出せて、外部サイトで表示される広告は減る。この構造は確かにあります。
つまり
「Web広告が死ぬ」のではなく、「PVを集めて広告を貼るモデル」が厳しくなっている、というのが正確なところです。
2.広告はどこへ行くのか
広告モデルそのものは終わりません。行き先が変わります。筆者が見ている行き先は3つです。
① AIの回答の中
Googleは2026年5月、AI Mode(会話型の検索)向けの広告を発表しました。AIの回答の中に「Sponsored」表記つきで広告が入り、その広告文もAIが会話の文脈に合わせて作ります。
広告主が自分で書いた文章ではなく、AIが商品データから作った文章で広告が出る。そうなると、広告の成果を左右するのは「元のデータがどれだけ整っているか」です。広告運用とGEO(AI検索への最適化)の境目は、どんどん薄くなっていきます。
② 「お金を払えば広告なし」の二階建て
ChatGPTは2026年2月に米国で広告を始め、日本でも6月から出稿できるようになりました。広告が出るのは無料プランと低価格プランだけで、広告は回答の下に分けて表示されます。
Amazonのプライムビデオも、2025年4月から広告を入れ、月額390円の追加で広告なしにできる形にしました。
無料なら広告、有料なら広告なし。AIと動画配信の両方で、同じ形が出てきています。
③ 時間を使ってもらう媒体
記事はAIに要約されます。でも、ドラマを見ている時間や、運転中にラジオを聞いている時間は、AIに要約できません。
広告は、こうした「相手の時間に入り込む媒体」に寄っていくはずです。実際、電通の「2025年 日本の広告費」では、ネット広告の伸びを引っ張ったのは縦型動画やコネクテッドTV(ネットにつながったテレビ)の動画広告でした。
3.中心になる考え方:人間の認知とAIの理解
ここからが本題です。
これまでの広告やブランディングは、人に名前を覚えてもらうためのものでした。ところが、AIが情報を集めて比較し、推薦するようになると、もう一つの相手が増えます。AIに、その会社のことを正しく理解してもらう必要が出てくるのです。
この2つは別物です。人には知られているのに、AIが会社の強みを正しく説明できない。逆に、AIには詳しく理解されているのに、人がその会社を知らないから選ばれない。どちらも起こり得ます。
| AIの理解:低 | AIの理解:高 | |
|---|---|---|
| 人間の認知:高 | 有名だが、AIに正しく伝わっていない → 情報の整備が課題 |
両方に知られている → 理想の状態 |
| 人間の認知:低 | 見つけてもらえない → 認知と情報基盤の両方が必要 |
AIでは見つかるが、知名度が低い → 推薦された後の信頼づくりが課題 |
人の認知を上げる手段と、AIの理解を上げる手段は違います。そしてWebサイトは、その両方を受け止めて、問い合わせや成約につなげる場所になります。
ここで一つ、見落としがちな落とし穴があります。広告などで名前を覚えてもらっても、その人があとで社名を検索したり、AIに「◯◯社ってどう?」と聞いたりしたとき、AIが競合他社を勧めてくる可能性があるのです。AIが必ず公式サイトを参照してくれるとも限りません。
POINT
人の認知とAIの理解は、セットで設計する。
名前だけ知られていても、AIが正しく説明できなければ、比較の段階で負けます。逆に、AIへの情報整備だけをしても、人が名前を知らなければ選ばれません。どちらか片方だけでは足りないのです。
4.流れる情報と、蓄積される情報
では、中小企業は具体的に何をすればいいのか。
人の時間に入り込んで名前を覚えてもらう方法の王道は、本来テレビCMです。でも、正直なところ、中小企業には高すぎます。
そこで筆者が注目しているのが、ながらで耳や目に入るコンテンツです。ラジオや、YouTubeのショート動画がそれにあたります。
| 手段 | 性質 | 中小企業にとって |
|---|---|---|
| テレビCM | ながら視聴で名前を刷り込む王道 | 高すぎる |
| ラジオCM/radikoの音声広告 | 耳で聞き流す。地域・年齢で絞れる | 手が届く。地域密着向き |
| YouTubeショート(自社で発信) | 流し見。費用は制作の手間だけ | 一番手軽。続ける力が必要 |
| YouTubeショート広告 | 流し見+地域や関心で絞れる | 少額から出せる |
特に関西は、ラジオ文化が根強い地域です。ビデオリサーチの2019年の調査では、民放ラジオの聴取率は関西が首都圏の約1.7倍、20〜30代では約1.9倍でした(少し古いデータなので、傾向として見てください)。
radikoの音声広告も、年齢や地域で絞れるようになり、2026年9月からはPontaの購買データを使った配信と効果測定も始まっています。ラジオは「昔の媒体」ではなく、データで絞れるデジタルの音声広告に生まれ変わりつつあります。
ただし、こうした「流れる」コンテンツだけでは足りません。名前を覚えてもらった後に、比較検討する人やAIが参照する「蓄積される」情報が必要です。
| 流れる情報 | 蓄積される情報 | |
|---|---|---|
| 役割 | 名前を覚えてもらう | 比較検討・信頼づくり |
| 例 | ラジオ、ショート動画、SNS投稿 | Webサイト、事例、FAQ、YouTubeの長尺動画 |
| 接触のしかた | 偶然、繰り返し | 意図して検索・確認 |
| 主な相手 | 人 | 人とAI |
| 測る指標 | 到達、記憶、指名検索 | AIでの引用、問い合わせ、成約 |
同じYouTubeでも、ショートと長尺で役割が違う
ここで面白いのがYouTubeです。米国の複数の調査で、YouTubeはGoogleのAI Overviewで最も多く引用されるサイトになっています。ただし、AIに引用されたYouTube動画のほとんど(ある調査では94%)は長尺動画で、ショート動画は5.7%でした。AIが読んでいるのは、動画そのものより、文字起こし・チャプター・説明文です。
つまり、同じYouTubeでも、ショートは人に名前を覚えてもらうための「流れる情報」、長尺はAIに理解してもらうための「蓄積される情報」と、役割が分かれます。
注意
これらはあくまで米国の調査で、数字も調査によって幅があります。日本語の検索で同じ傾向になるかは、まだ分かりません。それでも、長尺動画に字幕や説明文をきちんと整えておくことは、AI対策として意味を持つ可能性が高いと筆者は考えています。
5.一次情報を、1回の取材から使い回す
「ラジオもショートも長尺もサイトも、全部やるなんて無理」
そう思われたかもしれません。そこで大事なのが、媒体ごとに別々に作らないことです。
例えば工務店なら、1つの施工現場の取材・撮影から、次のように展開できます。
1つの施工現場(撮影・取材・技術の解説・お施主様の悩みと解決結果)から
- ショート動画(15〜60秒):名前を覚えてもらう
- 長尺動画(工程・技術・費用の解説):比較検討・AIの参照
- 施工事例ページ(写真・仕様・課題・成果):一次情報の本体
- FAQ・解説記事(実際によく聞かれること):検索・AI・信頼
- 簡易見積(事例ページに設置):試して問い合わせ
一つの一次情報から、認知・理解・信頼・成約へつながる複数のコンテンツを作る。こうすれば、撮影や取材の手間は1回で済み、どのコンテンツも同じ事実に基づいているので、内容がぶれることもありません。
6.企業サイトがやるべきこと
最後に、Webサイトそのものの話です。
情報は「公開・登録制・非公開」の3層で考える
AIに理解してもらうには、情報を公開する必要があります。でも、全部公開すればいいわけでもありません。
| 層 | 中身 | 目的 |
|---|---|---|
| 公開 | 会社の基本情報、サービス内容、事例、価格の目安、対応地域 | AIに理解される、指名で検索される |
| 登録制 | 詳しい資料、詳しい事例、独自のレポート | 見込み客の獲得 |
| 非公開 | 個別の見積、顧客データ、ノウハウの核心 | 競争力を守る |
どこまで公開するかは、「AI対策になるかどうか」ではなく、その情報でどう稼いでいる会社なのかで決めます。工務店なら、施工事例は公開して受注で回収するほうが合理的です。一方、調査会社が調査データを全部公開したら、売る商品がなくなります。
中小企業の企業サイトの多くは、「公開して、問い合わせと受注で回収する」が基本です。
一次情報は「構造化」で価値を上げる
情報量が多いことより、使いやすいことのほうが大事です。
- 仕様やサービス内容を、表やデータとして揃える
- 「この条件なら、これ」という形に翻訳する
- 実際の事例を載せる
- 実際に問い合わせで聞かれたことから、FAQを作る
体験型コンテンツは「お客様が止まる理由」から選ぶ
3Dやゲーム性から考えると、予算倒れになりがちです。お客様が問い合わせの手前で止まってしまう理由から逆算します。
| お客様が止まる理由 | 体験の形 |
|---|---|
| どれを選べばいいか分からない | 診断 |
| いくらかかるか分からない | 見積・料金シミュレーター |
| 仕上がりがイメージできない | ビフォーアフター、3D |
| 選択肢が多すぎる | 条件で絞り込み |
| 相談するのが不安 | 空き状況やチェックリスト |
中小企業なら、まず診断と見積から始めるのが現実的です。しかも、診断や見積の利用データそのものが、「お客様の◯割が△で悩んでいる」という新しい一次情報になります。
評価する指標を切り替える
PVや検索順位だけを見ていると、「アクセスが減った、失敗だ」という判断になります。でも、情報収集だけの人がAIで用を済ませるようになっただけなら、それは失敗ではありません。
見るべきは、指名検索の数、AIが自社を正しく説明できているか、どこから来た問い合わせか、そして商談や受注につながったかです。
つまり
アクセスが減っても、成約が増えていれば問題ありません。
SUMMARY
7.まとめ
- ゼロクリック化で減っているのは「PV」と「記事の横の広告」。検索広告は伸びていて、広告はAIの回答の中や、時間を使ってもらう媒体へ移っている
- これからは「人に名前を覚えてもらう」ことと「AIに正しく理解してもらう」ことを、セットで設計する
- テレビCMが高すぎる中小企業には、ラジオやショート動画のような「流れる情報」と、サイトや長尺動画のような「蓄積される情報」の組み合わせが現実的
- 一次情報は1回の取材から複数の形に展開し、サイトでは公開範囲・構造化・体験・評価指標を見直す
Webサイトは、なくなるわけではありません。「アクセスを集める場所」から、「名前を知った人とAIが確かめに来て、選ばれる場所」に変わる。筆者はそう考えています。
なお、この記事の論点は、筆者が立てた仮説を複数のAIで検証しながら整理しました。AIたちの意見がどこで一致し、どこで割れたのかは、別の記事で紹介する予定です。
REFERENCES
参考資料
- 日本経済新聞「AI検索普及、ゼロクリック率68%に上昇 揺らぐサイト集客」(ヴァリューズ調査)
- Google検索、68%が「ゼロクリック」へ(innovatopia)
- ゼロクリック検索とは?(迅雷)
- Alphabet Q1 2026: Google Network ad revenue falls 4%(PPC Land)
- What Google & Microsoft earnings say about search(Search Engine Journal)
- Google AI Mode ads(GIGAZINE)
- ChatGPT now shows ads(Northeast Times)
- Prime Videoが4月8日から広告表示、月額390円追加で表示なしに(Web担当者Forum)
- 2025年 日本の広告費(電通)
- radiko audio AdでPonta会員の購買データ活用の広告配信サービス提供(ペイメントナビ)
- AI Video Citation Index 2026(5W)
- YouTube for AI visibility(Parse)
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