SNSでの認知拡大によって成長してきた美容クリニックを、市場・競合・患者心理と、理事長自身の医師としての経歴・思想から再分析。
それまでの強い個人キャラクターを前面に出したブランド表現から、「なぜこの医師に任せるのか」が伝わる医療ブランドへと、Webサイトを180度再設計しました。

医療・美容医療 ブランド・信頼設計

ブランドとは、色やロゴを変えることではありません。 「このクリニックは何のために存在し、なぜこの医師が治療するのか」 その根拠を見つけ、すべての表現を一貫させることから始まります。

業種美容医療・美容外科
対象企業美容クリニック
支援領域市場調査・競合分析・ブランド戦略・経営理念整理・情報設計・Webデザイン・実装
事例区分ブランド再構築事例

課題

この美容クリニックは、開業当初一人の医師として認知を獲得し、患者を集めていく必要があったことから、SNSを積極的に活用し、理事長本人のキャラクターを強く打ち出すことで認知を広げていました。 その戦略によって事業は成長し、当時は大阪・東京・銀座の3院を展開する規模になっていました。過去の公式サイトにも3院が掲載されています。 しかし、組織が成長した後もWebサイトは、創業期の「まず自分を知ってもらう」ための表現を色濃く残していました。 黒を基調とし、院長個人のキャラクターを強く見せるサイトでしたが、

という、本来ブランドの中心になるべき情報が十分に伝わっていませんでした。

調査

そこでリニューアルにあたり、美容医療市場、競合クリニック、患者の選択行動、今後の美容医療市場、SNSによる集客構造などを改めて調査しました。 しかし、調査を進める中で重要だと判断したのは、競合との差別化のために新しいキャッチコピーを作ることではありませんでした。
すでに理事長自身が、非常に強いブランドの根拠を持っていたからです。

理事長の原点を再発見

理事長は、もともと心臓血管外科医でした。 国立大学医学部卒業後、胸部外科・心臓血管外科、腹部外科、乳腺外科、麻酔科などを経験し、その後も心臓血管外科医として手術経験を積んでいます。本人も、若手医師として多くの手術を経験し、技術が高まっていくことにやりがいを感じていたと語っています。 そのキャリアを変えるきっかけとなったのが、自ら受けたレーシック手術でした。 強い近視だった杉崎理事長は、手術によって視力が回復し、それまでとはまったく違うように世界が見える経験をします。 そこで、 「病気やけがを治療するだけではなく、健康な人であっても、手術によって人生をより良く変えることができる」 という美容医療の可能性に気づき、美容外科医へ転身しました。 現在の公式サイトでも、この経験が美容外科へ進んだ転機だったと本人が説明しています。 これは、単なるプロフィールではありません。 このクリニックが何のために存在するのかを説明する、ブランドそのものの原点です。

技術というもう一つのブランド資産

さらに、理事長には外科医として培ってきた「手技」という明確な強みがありました。 心臓外科で培った繊細な手術技術を美容外科へ応用し、美容外科の中でも特に高い精度が求められる鼻整形を得意分野としていました。 その専門性は、『美人は「鼻」で決まる』という著書を出版するまでになっています。公式サイトでも、心臓外科で培った手技を美容整形に応用し、鼻整形を得意としていることが紹介されています。 つまり、本来前面に出すべきブランド資産は、 派手なキャラクターではなく、 「外科医としての技術」、「美容医療へ転身した理由」、「患者の人生を良くしたいという思想」 でした。

アンドワンの判断

そこで、Webサイトの方向性を180度変更しました。 それまでの、 「SNSで目立つための院長個人を中心とした表現」 から、 「一人の外科医が、なぜ美容医療を選び、どのような技術と思想で患者と向き合っているのか」 を中心とするブランドへ再設計しました。
SNS戦略そのものを否定したわけではありません。

創業期に認知を獲得するためには有効だった戦略でも、3院を展開する医療法人へ成長すれば、Webサイトに求められ役割も変わります。 創業者を知ってもらうサイトから、医療機関として信頼してもらうサイトへ。 企業の成長段階に合わせて、ブランドも変える必要があると判断しました。

企画・実装

経営理念・存在理由を中心に再構成

最初に整理したのは、施術メニューではなく、「何のために美容医療を提供するのか」という根本でした。 レーシック手術によって自らの人生が変わった経験、美容医療によって患者のコンプレックスを解消し、より前向きな人生を送ってもらいたいという理事長の考えをブランドの中心に据えました。

理事長の経歴を「信頼の根拠」へ

医師紹介を単なる略歴一覧にせず、
「心臓血管外科医 → レーシック手術という自身の体験 → 美容外科への転身 → 高度な外科技術を美容医療へ → 鼻整形を専門分野へ 」という一つのストーリーとして整理しました。 経歴を掲載する目的は「立派な履歴を見せること」ではありません。 患者に、 「なぜこの医師なら自分の顔を任せられるのか」 を理解してもらうためです。

理事長の挨拶を重要コンテンツへ

価格や症例より前に、このクリニックが患者に対してどのように向き合うのかを伝えるため、理事長自身の言葉を重要なブランドコンテンツとして扱いました。美容整形は一般の商品購入とは違います。患者は、自分の身体や顔を医師に預けます。 だからこそ、「どの施術をするか」の前に、「誰が、どのような考えで施術するのか」 を伝える必要があります。

デザインを180度変更

デザインについても、それまでの黒を基調とした強い男性的・個人キャラクター型の表現から大幅に変更しました。 主要な患者である女性が、

  • 読みやすい
  • 相談しやすい
  • 清潔感がある
  • 医療機関として信頼できる
  • 自分の悩みを安心して相談できる

と感じられる、明るく清潔で繊細なデザインへ変更。 単なる「女性向けデザイン」ではなく、ブランド戦略そのものを視覚化しました。

手術技術をブランドの中心へ

美容医療では広告表現や価格競争が目立ちやすい一方、本来患者が最も重視すべきなのは医師の技術です。 そこで、理事長が心臓外科で培った外科技術と、特に鼻整形を得意とする専門性を明確にしました。 「有名だから選ばれる医師」ではなく、 「なぜ技術的に選ぶ理由がある医師なのか」 を説明できる構造へ変更しました。

成果・変化

このリニューアルで行ったのは、単なるデザイン変更ではありません。黒いサイトを白くしたのではなく、ブランドの根拠そのものを変更しました。従来は、SNSでの認知獲得を背景に、「理事長という強い個人を見せる」ことが中心でした。それを、
「 医師としての原点 → 美容医療を選んだ理由 → 患者に対する思想 → 外科医としての技術 → 鼻整形という専門性 → クリニックとしての理念」
という一貫した構造へ再編しました。その結果、Webサイトは、 「目立つ美容クリニック」から「この医師に任せる理由が分かる美容医療ブランド」 へと変わりました。

この事例から分かること

ブランドを作るために、格好のよいコピーを考えたり、高級そうなデザインを作ったりする必要はありません。企業や経営者を調べていくと、すでにブランドになるべき理由を持っていることがあります。
この事例では、
・なぜ医師になったのか。
・なぜ心臓外科から美容外科へ進んだのか。
・なぜ鼻整形なのか。
・患者をどうしたいのか。
まで遡ったことで、グローバルビューティークリニック本来のブランドが見えてきました。

アンドワンでは、現在のホームページをそのまま綺麗に作り直すことをリニューアルとは考えていません。 市場を調べ、競合を調べ、顧客を調べ、そして企業や経営者自身を調べる。 そのうえで、 「この会社は本当は何者なのか」 を明確にし、それを経営理念・情報構造・コンテンツ・デザインまで一貫して表現します。

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