堺市で37戸の分譲住宅を開発する地域工務店から、 「大阪府の新規事業助成金を申請したい。住宅とWebを組み合わせた新しい事業を企画してほしい」 という相談を受けました。

地域企業・住宅・新規事業 助成金 3億4,000万円

Webサイトを依頼された案件ではありません。求められたのは、 「新しい事業を考えること」でした。 Webを作ることからではなく、住宅を購入した人の暮らしそのものを考え、そこに必要な技術を組み合わせて事業を企画した事例です。

業種住宅・不動産・分譲地開発
対象企業建設会社
支援領域新規事業企画・市場調査・技術調査・メーカー折衝・スマートハウス企画・Webシステム企画・SNS企画・プレゼンテーション
事例区分新規事業・成果事例

一本の電話から始まった新規事業

ある日、取引先である建設会社の社長から、突然携帯電話に連絡がありました。 話を聞くと、堺市で37戸の住宅を建設できる土地を取得したとのことでした。 しかし、37戸を一度に開発するには大きな資金が必要になります。
そこで、「大阪府の新規事業助成金を活用したい。そのために、住宅とWebを組み合わせた新しい事業を企画できないか」 という相談を受けました。
具体的に作りたいシステムが決まっていたわけではありません。「Webを使って何か新しいことができないか」というところからのスタートでした。

住宅そのものからリサーチ

そこで最初からSNSを作ろうと考えたわけではありません。

新しい住宅技術やWebサービスなどを多方面から調査しました。その中で着目したのが、当時登場し始めていた 「スマートハウス」でした。

住宅設備やエネルギーをネットワークでつなぎ、住宅全体を情報化していくという考え方です。 このスマートハウスとWebを組み合わせれば、単に新しい住宅を販売するのではなく、「暮らし方そのものが新しい分譲地」を作れる と考えました。

メーカーへ直接問い合わせ

当時、スマートハウス関連の住宅設備を本格的に展開しているメーカーはまだ限られていました。 そこで、アンドワンからパナソニック電工へ直接連絡。 「住宅会社を紹介し、実際に設備を採用することを前提としている」と事情を説明し、担当者につないでもらいました。 そこでスマートハウスの設備構成やネットワーク、表示・操作方法など、具体的な仕様を確認しました。
重要だったのが、家庭のテレビを情報端末として利用できることでした。 リビングにあるパナソニックのテレビ「VIERA」を通じて、住宅設備やエネルギーに関する情報を確認・操作する。
そこで、 「このテレビ画面を、住宅設備を見るだけのものにせず、分譲地そのものの情報端末にできないか」 と考えました。 ここから、スマートハウスと分譲地専用SNSを組み合わせる企画が生まれました。

アンドワンの判断

スマートハウスだけであれば、設備メーカーの商品を導入するだけです。 SNSだけであれば、住民が投稿できるWebシステムを作るだけです。 しかし、この二つを組み合わせれば、 「 家 + エネルギー + 住民 + 地域 + 防犯 」 を一つの情報基盤でつなぐことができます。
そこでWebを「ホームページ」としてではなく、 37戸の分譲地全体をつなぐ生活インフラ として設計しました。

企画・実装

住民専用SNS、スマートハウス連携、地域情報、防災、コミュニティ運営を一つの構想として整理しました。

スマートハウス×分譲地専用SNS

企画したのは、37戸の住民だけが利用できる専用SNSです。 一般公開型のSNSではありません。住宅を購入した住民が、日々の暮らしの中で使うことを前提としています。

太陽光発電量を表示

各住宅に設置された太陽光発電設備から得られる情報を利用し、発電量などを確認できるようにする。スマートハウスのエネルギー情報とWebシステムを結び付けます。

住民専用の地域SNS

37戸の住民だけが参加でき、

  • 近隣情報
  • 地域のお知らせ
  • 住民からの投稿
  • 分譲地内の連絡
  • 従来の回覧板に相当する情報

などを共有できる仕組みを企画しました。 紙の回覧板を各家庭へ回すのではなく、リビングのテレビを見れば、分譲地の情報が分かる。 という生活を想定しました。

テレビで使える画面設計

パソコン用のWebサイトをそのまま表示するのではありません。 リビングのテレビでの実利用を見据え、画面サイズ・視聴距離・リモコン操作性に最適なレイアウトと情報量を調査して設計しました。 当時はスマートフォンが住宅情報端末になる以前の時代です。 そこで、各家庭の中心にあるテレビを生活情報の入口として利用しました。

防犯を「一軒の問題」から「地域の問題」へ

この企画で特に重要だったのが、防犯システムとの連携です。 通常のホームセキュリティでは、Aさん宅で異常が発生する → 契約者であるAさんへ通知されるという仕組みになります。
これは当然、契約者の住宅を守るためのシステムです。 しかし、住宅地という単位で考えると、それだけではありません。 たとえばAさん宅に空き巣が入った場合、隣のBさん宅も危険である可能性があります。

そこで考えたのが、防犯情報を分譲地SNSにも表示するという仕組みです。
Aさん宅で異常が発生すれば、その情報を地域側でも共有する。 すると隣のBさんも、自宅のリビングにあるテレビを通して、「近所で異常が発生している」ことを知ることができます。
つまり、一軒の住宅を守るセキュリティから、37戸全体で地域を守るセキュリティへ。 住宅設備とWebを組み合わせることで、防犯の考え方そのものを拡張しました。

企画書を作成し、大阪府へプレゼン

これらの内容を、 「スマートハウス × エネルギーマネジメント × 分譲地専用SNS × 地域コミュニティ × 防犯」 という一つの新規事業として企画書にまとめました。
そして大阪府の新規事業助成金担当者4名に対し、アンドワンが企画内容を直接プレゼンテー ションしました。

特に高く評価されたのが、防犯システムの考え方でした。 既存のホームセキュリティを単に住宅へ導入するのではなく、 「一軒で発生したリスクを地域全体で共有する」 という仕組みに発展させたことです。
Webを情報発信の道具としてではなく、地域で安全に暮らすための基盤として利用する考え方でした。

成果・変化

この新規事業企画は大阪府から評価され、3億4,000万円の助成金獲得につながりました。 Webサイト制作費に対する補助金ではありません。37戸の住宅開発というリアルな事業に対して、 住宅設備・エネルギー・IT・コミュニティ・防犯を組み合わせ、新しい住宅事業そのものを企画した結果 です。 また、当時はスマートハウスそのものがまだ珍しかったことから、この分譲地には住宅・自動車関連企業などからも注目が集まりました。 三菱自動車からも常務取締役をはじめとする関係者が視察に訪れるなど、先進的なスマートハウス・分譲地として関心を集めました。

この事例から分かること

この案件で最初に依頼されたのは、「ホームページを作ってほしい」でも、「SNSを作ってほしい」でもありません。 「37戸の分譲地を開発したい。新規事業としてWebを使って何かできないか」という相談でした。そのためアンドワンでは、最初から作るものを決めませんでした。

その結果として、スマートハウスと分譲地専用SNSを組み合わせるという答えにたどり着きました。 重要なのは、SNSという技術ではありません。 「何を作るか」から始めるのではなく、「何を実現したいのか」から必要な技術を探し、組み合わせることです。

アンドワンでは、ホームページやシステムを作ること自体を目的にせず、 クライアントが実現したい事業から逆算し、そのために必要な仕組みそのものを企画します。

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